「自動車部品の設計の仕事って稼げるの?」そんな疑問を持たれる方も多いと思います。
豪邸に住んでいて、いい車に乗っていて、趣味は海外旅行みたいな生活をしている設計者は見たことがありませんが、自動車部品設計の仕事は実際稼げます!
この記事では、自動車部品メーカーに勤める私が、給与やボースを暴露しながら、就職活動のアドバイスなども交えて紹介していきます。
自動車部品の設計の給料や平均年収はいくら?
私は現在32歳 男性 大学院卒(情報系)です。
大学院卒業後、3年務めた会社を退職し、現在は自動車部品メーカーに中途入社し4年目になります。
給与は平均して月32~35万円、年収はボーナスを含めると500万円ほどです。
日本の平均年収が430万円なので若干高めです。
自動車部品の設計は給料安い?
自動車部品の設計の給与は決して安くありません。
国税庁の調査によれば、自動車部品の設計は製造業なので下のグラフによると、おおよそ日本の平均給与くらいの年収となっています。
「自動車部品の設計の給与=日本の平均給与以上」です。
では、なぜ製造業の自動車部品の設計の給与が低くはないのでしょうか。
それは、自動車メーカートップのT社の年収を一つの指標として、各自動車部品メーカーが給与の設定をしているからなのです。
「今年のT社の平均年収は…」などのニュースをよくテレビで見かけることがあると思います。
「T社があの給与なら」という心理が、良くも悪くも各自動車部品メーカーにも働きます。
悪くもと言ったのは、給与はT社よりも若干下回るのが普通です。
しかし、極端に給与が低い部品メーカーはほとんど存在しません。
もしT社グループの部品メーカーであれば、親会社だけが極端に給与を高くするわけにはいかないですよね。
※余談ですが、T社のグループ会社の建物はT社本社ビルよりも若干低く建物が設計されています。
自動車部品の設計の給料明細とは
私の給与を紹介します。
◇支給額:290,000円
・基本給:266,000円(年齢給:8,000円、実力給:230,000円、資格給:28,000)
・食事手当:4,000円
・家族手当:1,4000円(子供1人分)
・通勤手当:6,000円
※残業を月に20時間(1日1時間)した場合は+8万円ほど
給与が極端に高い訳はないですが、「結局大学院卒だから」、「理系だから」などの声が聞こえてきそうなので、自動車業界の給与の仕組みを少しご紹介いたします。
実は「32歳/院卒/勤続年数3年の私」と「32歳 高卒 勤続年数14年の先輩」との給与差はほとんどありません。
なぜなら、自動車業界から年功序列の風習がなくなった今、年齢給が極端に下がり、資格給や実力給といった社員のやる気や成果を評価の対象にする制度が、どの自動車部品メーカーにも存在します。
また、等級(役職のようなもの)があり、等級に応じて給与には「限界上昇値」が決まっています。
つまり、ずっと平社員でも年齢に応じてある程度の給与までは上昇するが、次の等級(役職)に上がらないと給与は一定の値で、それ以上は上昇しないという仕組みです。
なので、学歴や専門的なスキルに関係なく、本人のやる気がしっかりと評価されるのが自動車業界であり、自動車部品の設計の仕事なのです。
自動車部品の設計のボーナスや退職金はいくら?
ボーナスは年2回支給され、32歳 院卒 勤続年数4年目の私の1年間のボーナスの合計は120万円ほどです。
通常の会社は6月と12月なのですが自動車業界は7月と12月に支給されます。
ボーナスは平均して給与の5倍ほど支給されます(前の年の社内の個人評価によって100%~120%まで変動します)。
※余談ですが大手自動車部品メーカーの場合、各社の業績に関係なく一定額のボーナスが支払われます。売り上げが低いグループ会社が存在してもその売り上げ、グループ会社内で補填してボーナスがしっかりと支払われます。
自動車部品設計の仕事の将来性について
自動車部品設計だけできる人には将来性がない職業です。
なぜなら自動車部品設計で得られるスキルは現在、ほぼすべてがAIや簡単なソフトウェアによって代用が可能だからです。
自動車部品設計と一言で言っても、機械設計、材料力学、流体力学熱力学など様々な分野の知識を組み合わせながら一つの部品を設計しており、10年ほど前は知識や経験が豊富な先輩社員が会社の中で重宝されてきました。
しかし、現在は「インターネットでいかに求めている答えを的確に調べられるか」のほうが重要視されています。
私の会社でも自ら新しいことに挑戦し続ける社員以外は歳をとるにつれて、仕事が減ってしまっているのが現実です。
では、「自動車部品設計に将来性はないのか?」というと一番人にとって重要な個性の中に将来性が隠れていることに最近気が付きました。
それは、「キミがいたからできたんだ!」といわれるような個人が持つ特有のスキル(こだわり)を活かした設計です。
お客様が求めている仕様を満足しても、それはロボットにだって真似ができてしまいます。
お客様が求めている一歩先のソリューションを提供してあげることで感動を与えることは、今は心を持った人間にしかできません。
自動車部品の設計は将来的に「良い設計」よりも「誰が設計したか」ということが重要視されてきます。
そんな時に、自分自身のオリジナルの感動をつくれる人だけが自分が設計した部品で社会に貢献し続けられると考えています。
自動車部品の設計になるには
自動車部品の設計になるには新卒はお勧めしません。
新卒で「設計部署」への希望を出しても、結局総合職としてどの部署に配属されるかはわかりません(中小企業の場合は設計部署の部長に気に入ってもらえると、すんなり設計に配属されたりします)。
もし、絶対に自動車部品の設計になりたい場合は、中途採用で設計を募集している自動車部品メーカーを狙っていくのがお勧めです。
自動車部品メーカーは歴史が長い分、各社で新卒・中途採用関係なく、教育制度がしっかり整っている会社が多く、設計経験が豊富な人よりは、自動車部品に興味があり、新しい発想を持っている人を好みます。
自動車部品の設計の志望動機の書き方や面接のポイント
志望動機に「〇〇の経験を活かしたい」、「○○が得意」は禁止!
私はリーマンショックのど真ん中で300社以上のエントリーシートの作成、50社を超える面接経験があります。
自動車部品の設計の志望動機でよく書いていたのは
・CADを大学で学びました
・前職では機械設計が専門です(転職時)
・電子回路設計やプログラミングの経験を活かして…など
こういう志望動機を書いていた会社はすべて落ちました。
では、なぜ内定がもらえないのか、現在勤務している会社の人事の方々にインタビューした結果がこちらです。
▼何を学んできたかはあまり興味がなく、今から何を身に着けて、うちの会社でどのように活躍したいかが大事
▼専門的な知識を持った人よりも、入社してから、うちの会社で何をしたいのかが重要
▼得意分野を強く押す人は、苦手なことに直面するとすぐにダメになってしまうし、会社になじめない
歴史長い自動車業界の人事は優秀な人間を嫌というほど見てきています。
ただ一つ採用するにあたって大切にしていることは、履歴書でも面接でも「入社後に何をしたいのか!」を自分の中でしっかり考えて、答えられるかが採用時のポイントとなっています。
まとめ
ここまで述べたように、自動車部品の設計は決して稼げない業種ではありません。
設計業務はアウトプットが図面として現れる分、評価もされやすく、経験を積むごとにその後のキャリアアップも期待できます。
また、自動車部品メーカーから転職する際も、「設計ができる=機械設計、材料力学、機構設計の知識がある人材」として、様々な分野の企業に採用されやすくなります。
給与だけではなく、設計業務を通して自分のスキルを磨いていくうえでも、自動車部品の設計はお勧めの職業です。