今、世の中は、どんどん小型化、軽量化、デジタル化の方向へ進んでいます。
この傾向は今後も変わらないでしょう。
しかし、こんな時代だからこそ、敢えて重厚長大産業であるインフラ用機械設備のエンジニアを目指したいというような人は貴重です。
前回の東京オリンピックの頃の、国全体が成長を目指した時代とは大きく変わり、気候変動、30年以内に必ず起こると言われている地震等への備えが再重要な課題となってきています。
それらに応えるインフラ整備もそれに携わるエンジニアも確実に必要とされるはずです。
これが少しでも興味を持ってもらえるきっかけになれば嬉しいです。
プラント建設会社のインフラ用機械設備等のエンジニアとは
インフラ用設備といっても、ピンと来ないかもしれません。
インフラとは生活や産業の基盤となる設備のことなので、橋や道路、上下水道、通信、港の設備などがそれにあたります。
いずれも災害などでこれらの設備が使用できなくなると、国として一気にピンチになる大事な設備です。
ここでは港の機械設備を例に述べてみたいと思います。
資源のない日本は、石炭、石油、鉄鉱石等の鉱物原料はほとんど輸入に頼っています。
また小麦、大豆、トウモロコシのような食用や牛や鶏の飼料用の穀物原料も合わせて年間3000万トンも輸入しています。
これが途絶えると大変なことになります。
これらを日本へ運ぶのには、十万トンも超えるような大型船舶が使われ、主な港で荷下ろしがされます。
その荷下ろしをするための機械設備、ここではいわゆるクレーンと呼ばれる重機が後段の倉庫や工場へ移送するための最も重要な入り口設備として必要になります。
これら設備の計画から設計、製作、組立、据付、試運転等を担当するのがエンジニアの仕事になります。
クレーンといっても、ビルの10階よりも高くなるような場合もあるので、なかなか迫力のある設備になります。
東京湾等でキリンのようなクレーンが林立しているのを見たこともあるのではないでしょうか。
このように概してインフラ設備といえば、大きくて、いかにも社会の基盤を支える重要な設備となります。
時代に関わらず、なくてはならない大事な設備だからこそ、それに携わるエンジニアは、これからも必要な人材といえるでしょう。
プラント建設会社のインフラ用機械設備等のエンジニアの仕事内容は
このようなクレーン設備は、一基で少なくとも数億以上はする設備になるので、一人で出来るわけではありません。
通常はプロジェクトチームを組んで進めることになります。
全体の計画立案をする人、それに基づいて詳細設計をする人、また製作工場との調整、指導、検査に関わる人、据付現地での監督指導、等様々な仕事があります。
また、それらすべてをマネジメントするプロジェクトマネージャーも必要とされますね。
ここではクレーンの計画立案、設計を例に簡単に述べてみます。
全く新しい場所に設ける場合は、荷下ろしする原材料の種類や年間の扱いトン数、運んでくる船舶の大きさ等から、最適なクレーンのタイプ、能力、サイズを決定し顧客に提案をします。
また、既存の場所に設ける場合には、老朽化した設備を更新する場合など、状況も様々なので、計画も顧客と何回もすり合わせしながら練り上げていきます。
最近は、大きな地震や津波による倒壊や海への水没も経験しているので、防災対策をどうするかも大変重要になってきています。
つまり、標準化された均一の製品を提供するというより、顧客のニーズ、設置条件、新設か更新か、もちろん予算に合致するかどうかも踏まえながら、全体の計画を纏めていきます。
この辺りは、エンジニアとしてセンスが問われるので、なかなか面白いところです。
計画がまとまれば、機械、電気、鉄骨躯体等それぞれの詳細設計に入っていきます。
それぞれの分担、役割に応じた仕事をチームで行うことになります。
プラント建設会社のインフラ用機械設備等のエンジニアの1日の仕事の流れは
プロジェクトチームが組まれると、機械、電気、鉄骨躯体等それぞれに担当が分かれ、作成されたスケジュールに合わせ仕事をしていくことになります。
また、また担当間の連携も必要なので、プロジェクト連絡会議で、進捗状況、設計変更、スケジュール確認等を適時調整していきます。
クレーン設備の場合、大体契約納期は1.5~2年くらいなので、それに見合った日々の仕事量になっていきます。
かなり忙しいです。
プラント建設会社のインフラ用機械設備等のエンジニアに必要な資格や免許の難易度は
まずエンジニアの入り口としての特別な資格は必要がありません。
この分野に興味のある人にとっては有難いことです。
ただし、資格はなくても知識は必要です。
経験から、初めは機械工学の基礎知識があれば十分と思います。
学校でインフラ用機械設備の具体的なことなど学びませんからね。
仕事に従事しながら具体的な課題に取組ながら、実際に求められる知識として、構造力学や電気制御等に広げていけば良いと思います。
担当する分野、立場にもよりますが、幅広い知識の吸収に勤めることは、きっと将来の役に立ちます。
経験を積んでいく中で取得したほうがよい資格も見えてくるでしょう。
プラント建設会社のエンジニアの給料や年収、仕事のきつさなどに関してはこちらの記事で実際のエンジニアさんが詳しくご紹介していますのでご確認下さい。
🔗プラント建設会社のインフラ用機械設備等のエンジニアはきつい?給料や年収、実際の口コミや評判とは!
プラント建設会社のインフラ用機械設備等のエンジニアのやりがいについて
あまり深く考えることもなくプラント建設の会社に応募し1971年に入社しました。
配属先は、当時社内で花形の化学プラント建設部門で、幹部も先輩達も皆若く、部内は活気に満ち満ちていました。
一日でも早く、あの先輩達のように独り立ちし、活躍したいと、純粋に目を輝かせ、同期のメンバーと切磋琢磨していた日々を鮮明に覚えています。
今から振り返ると、当時は高度成長期の末期、その後は、国内での需要が急速に下火になり、海外への進出を模索しなければならない厳しい時代の始まりでもありましたが、それでもあれだけ希望とやりがいに燃えていたのは、インフラ用設備という業種に大きな要因があったと思います。
スケールの大きさと目に見える成果物。
これはサイズ、金額共にです。
そして会社にもよるかもしれませんが、若い担当エンジニアへ与えられる権限も、他の職種に比べて、大きく、柔軟さがあるように思います。
仕事は、困難はあっても、自分が作っているとの責任感とやりがいがあれば、頑張れるものです。
感覚的には、「プロジェクトX」のようなイメージでしょうか。
そこには時代に関わらず心を燃やすものがあると思います。
プラント建設会社のインフラ用機械設備等のエンジニアに向いている人向いていない人とは
はっきり言って、心身共にタフな人が向いています。
仕事のスケールが大きいし、決められた期限の中で完成させるという、プレッシャーは大きいです。
しかしそれだけに完成した時の喜びは大きいものがあります。
与えられた仕事をもくもくとこなすというより、顧客とも積極的にコミュニケーションを取り、難しい課題があっても前向きに取り組む挑戦者的な人が向いているでしょう。
失敗は成功の肥やしと考えられる人は必ず成長します。
有名大学や大学院を出て、勇んでこの分野に入ってきたものの、実力を発揮することができず、挫折していった人が多くいます。
学歴の良し悪しではないですね。
チームで仕事を進めるので、協調性もとても大事になります。
プライドに縛られ、せっかくの能力をうまく発揮できないで辞めていく人も中にはいます。
自分で学び、他人からも学ぶ柔軟でしなやかな人は、やがてリーダーとして頭角を現していくのは、どの分野でも変わりませんね。
プラント建設会社のインフラ用機械設備等のエンジニアになるまでの道のりや方法は
インフラ用機械設備のエンジニアといっても、エンジニアリングメーカーのエンジニア、製作メーカーのエンジニア、工事会社のエンジニア、等々さまざまです。
仕事の中身は変わりますが、それぞれにやりがいの中身もまた違います。
個人の設計力を磨き、より良い製品を作り出して行きたいと思う人は、製作メーカーのほうが良いでしょうし、設備全体を計画から、製作、工事の全体を取りまとめるエンジニアを目指すなら、エンジニアリングメーカーが向いています。
会社の規模の大小もそれぞれにメリットデメリットがあります。
どちらを選ぶかは他人が決められることではありません。
今こそインフラ設備のエンジニアへ挑戦!
阪神淡路大地震、東日本大地震は日本のインフラ設備に大打撃を与えました。
多くのクレーン設備が倒壊し、中には水没した物も多数あります。
一刻も早く復旧しなければ、国民生活に大きな影響がでると関係者は必死になりました。
これは過去の問題ではありません。
将来への警告でもあります。
インフラ関連を扱う会社やエンジニアを目指す人がもっともっと増えてほしいと願っています。